ブルータワー
2008 / 03 / 24 ( Mon )
私にとって初・石田衣良。 事前情報がまったくないまま手に取りましたら、なんとびっくり、SFでした。 小中学生の頃はSFばかり読んでいたので、懐かしくも嬉しい作品でした。 また、著者もあとがきで書いていることですが、最近日本のSFに勢いがないですよね。 でもそれは、30年ほど前にはホラーやファンタジーは今ほど確立したジャンルではなくて、SFの中に含まれていたんだと思います。 実際、私が好んで読んでいたSFも、いわゆるスペースオペラではなく、今で言えばホラーに含まれるようなものが多数でした。 この作品は、スペースオペラではありませんが、タイムスリップ、未来戦争というありがちなSFネタに、911やBird Flu、細菌兵器などタイムリーなスパイスを利かせてます。 そして、劇画やハリウッド映画に出てきそうなキャラたちと友情や信頼関係など、「クサイな」と思いながらも目が離せません。 話の流れからして、ハッピーエンドの勧善懲悪、綺麗に丸く収まるんだろうなぁと予測できていても、エンターテイメントとして純粋に楽しめた作品でした。 ★★★★★ |
閉鎖病棟
2008 / 03 / 15 ( Sat )
たくさんのミステリ作品を書いてる作家さんなので、これもそうかと思って読み始めましたが……推理小説ではなく、ヒューマンドラマというか、文学のような作品でした。 中絶費用を捻出するために売春する女子中学生から物語は始まり、次の章ではいきなり終戦直後の復員兵へと焦点が移るため、読み始めてしばらくは戸惑いました。 でも、淡々とした語り口で精神科病棟の入院患者たちの過去や人間関係が描かれて、やがてそれらが一本に縒り合わさっていく……そんなお話。 殺人事件が起こるのはだいぶ後になってからだし、殺人事件がこの小説の中心ではないので、軽いテンポでさくさく読めるエンタメ小説を期待してると、挫折してしまうかもしれません。 しかし、最後は泣けます。 障害者の中でも、忌み嫌われて目を背けられることの多い彼らは、家族に捨てられるように20年、30年と病院で暮らし、その間誰も面会に来ないケースもあります。 さらには、犯罪者ですら精神疾患が認められると強制入院となり、警察でさえ目を向けようとしない……実際は開放病棟であるのに、それは閉鎖病棟だと著者は述べています。 いろいろ考えさせられた作品。 ★★★★☆ |
空中ブランコ
2008 / 03 / 14 ( Fri )
シリーズ第1弾の『イン・ザ・プール』はまだ読んでませんが、短編集なので話の流れに問題はないです。 まず、この作家さんの独特の文体にびっくりして、数行読んで経歴を探しましたら……、ああ、なるほど、コピーライターの経験があるのですね。 短い文章の中の単語のひとつひとつが、すごく厳選されてる印象なんです。 ストーリーとしては、いろんな方も書いていらっしゃいますが、ユーモアに溢れてて笑えます。 伊良部医師と看護士・マユミのコンビが目に浮かぶようです。 そしてどのお話もハッピーエンドで、優しい人ばかりで、読後は気持ちがほっこり。 私は特に『義父のヅラ』で、終始ニヤニヤしながら読んでました。 笑って、ほっこり、おまけに文体が読みやすくて字も大きい……「ちょっと疲れたなー」という時に読みたい本です。 ★★★★☆ |
おれに関する噂
2008 / 03 / 02 ( Sun ) |
予告された殺人の記録
2008 / 02 / 15 ( Fri )
ノーベル文学賞を受賞したコロンビアの作家・ガルシア=マルケスの中編小説。 フィクションですが、現実にあった殺人事件を細かく取材して書かれたものだそうです。 ストーリーはタイトルが示すように、殺人者の口から周囲の人々に、また被害者本人にも手紙で殺人予告がされていたにもかかわらず起きてしまった事件。 小さな街の人々の、さまざまな視点から語られる事件の様相が、読むにつれて明らかになっていきます。 “名誉のための殺人”で釈放される文化というか……すごい国だな、と思いました。 翻訳がちょっと残念な感じで、星一つ減らしました。 (『百年の孤独』の翻訳者さんが上手すぎるのかも) ★★★☆☆ |
砂の女
2008 / 02 / 02 ( Sat )
【あらすじ】 日常に疲れた男が昆虫採集に出かけた海岸で、砂に埋もれかけたあばら屋に閉じ込められる。 終わりのない砂かきを続けながら、あの手この手で逃亡を企てる男と、引き止めてようとする女、そして逃亡を妨害する部落の人々。 しかし、いつしか男は……。 --------------- 海外で非常に評価の高い安部公房の代表作。 「どうしてこんな表現が思いつくの!?」とハッとさせられる、それでいて的確な比喩や描写が溢れています。 冒頭からあり得ない話だとわかっているのに、ミステリのようなSFのような、昔の筒井康隆作品のようなパラレルともいえる不思議な世界に引き込まれ、一気に読んでしまいます。 ですが、文学作品なので、そこに込められたものは深く大きく、私ごときではうまく語れませんので多くの人にぜひ読んでいただきたいです。 1962年に発表されたこの作品は、主人公の男性が家庭や日常生活に埋もれていき、やがて野心をどこかに置き忘れたことすら忘れてしまうごく普通の男性のように私には思えましたが、2008年の現代では、この姿は女性にも(女性にこそ?)当てはめられるような気がします。 実際、私自身も、埋もれそうでもがき続けて、でも心の片隅で「まぁ、しょうがないか」と諦めかけてるんだなぁ、と。 共感しました。 ★★★★★ |
太陽の塔
2008 / 01 / 04 ( Fri )
2007年『この文庫がすごい!』で第1位になったモリミーのデビュー作。 著者が京都大学の院生だった時の作品で、第15回日本ファンタジーノベル大賞を受賞しました。 ストーリーは、彼女にフラれた大学生(休学中)のドタバタでグダグダな毎日が延々と綴られています。 「どこがファンタジーなの?」と読みながら思ったんですが、読み終わってみれば、はぁ、ファンタジーかもなぁと納得させられてしまいます。 この手の青春小説は昔からいろいろありましたが、この作品の一味違っている点は、登場人物が全員京大生だということ。 私のような凡人とは違う脳味噌と視点で混沌としたお年頃を生きる彼らは、将来のエリート街道を約束されていても、それはただの“フラれた未練がましい男”だったり、“彼女いない歴20ウン年”だったり。 主人公の一人称で語られる文章は知性溢れるものだけど、やってることはくだらなくて、そのギャップがまた笑えます。 20代の人におすすめ。 ★★★☆☆ |
海と毒薬
2007 / 12 / 28 ( Fri )
第二次世界大戦末期、九州の大学病院で実際に行なわれた米軍捕虜の生体解剖。 この“殺人事件”をベースにしたフィクションです。 残酷な、信じられない、信じたくない事件ですが、この本のテーマは『罪と罰』であって、グロテスクさを売り物にしたものではありません。 終始淡々とした描写で事件に関わった人物の背景や心理が語られていき、その中に『罪とは何か』という疑問が織り込まれています。 罰せられることがなければ、それは罪にはならないのでしょうか。 時代背景的に『みんな死んでいく世の中』において、命の重さが学内の派閥争いよりも軽く扱われていることのほうが、よっぽどグロテスクだと感じました。 冒頭に描かれている、戦後(昭和30年代)の平和な新興住宅街の様子をじっくり読むと、戦争の狂気が浮き彫りになってゾッとします。 どこかで読んだ、『戦争が起こるたび、兵器と医学が飛躍的に進歩する』という一節を、思い出していました。 ★★★★☆ |
三人の美姉
2007 / 11 / 02 ( Fri )
タイトルからして一目瞭然。 一冊にいろんな要素を詰め込める、美味しい設定だなぁと感心します。 結婚を控えた妖艶な長女、奔放でボーイッシュな次女、処女で純真な三女、そして3人の姉たちに可愛がられて育った高校生の主人公は、やりたい盛りのチェリーボーイ 。 展開はご想像のとおりです。 さらには百合風味も加わり、楽しい場面がたくさんありますよ♪ もうこの際、ストーリーなどはあまり関係ないかも(笑) ★★★☆☆ テーマ:恋愛:エロス:官能小説 - ジャンル:小説・文学 |
純愛ロマンチカ (2)
2007 / 10 / 22 ( Mon ) |
純愛ロマンチカ
2007 / 10 / 22 ( Mon )
コミックに登場する、うさぎさんが書いている小説がこれ? コミックは読んだことがないのですが、なかなか楽しめました。 なんかもうBLの王道というかお手本というか。 女性には経験することのできない場面の描写が、「あら?読んだことがあるわ」ってな感じです。 (自分が書く時は気をつけようっとw) 攻めは俺様系だし、受けは可愛いし、で、好きなお話です(^^) ★★★☆☆ |
青春の蹉跌
2007 / 10 / 12 ( Fri )
ふとした時に手にしては、何度も読み返してしまう悲しくも寒々しい青春小説(と思ってる)。 初めての出会いは、高校の現国の教科書だったか模試だったか。 抜粋を読んですぐに書店に走ったのでした。 ストーリーは、一流大学に通う母ひとり子ひとりの傲慢な主人公が、親からも周囲からもエリート街道まっしぐらな将来を期待されていながら、たったひとりの女のために転落していく物語。 つまりは、お勉強ができても世間知らずなボクちゃん……そんなお話。 (いや、一応文学作品なんだから、もっともっと深いんだろうけど) 暗くて破滅的で可哀想で、でも「あんた、ほんとバカね」って同情しながらも苦笑してしまう、大好きな作品です。 20代前半の方にぜひ読んでいただきたい。 ★★★★★ |
冷静と情熱のあいだ―Blu
2007 / 06 / 27 ( Wed )
比べてはいけないのかもしれませんが……Rossoよりずっと描写が細かくて、主人公の男性も決して格好良くなんかなく、弱さやずるさもよく描かれていて逆に魅力的。 この作家さんの文章は、結構好きです。 同じ恋愛をしていたはずのふたりですが、男性のほうがずっとずっと濃い時間を過ごしていたような印象を受けるのは、辻仁成の筆のせいですね、きっと。 ラストが微妙に違うので、両方読むならRossoを先に読むことをお薦めします。 ★★★☆☆ |
冷静と情熱のあいだ―Rosso
2007 / 06 / 26 ( Tue )
ひとつのラブストーリーを、ふたりの作家が女の目線と男の目線で書く、という試みに惹かれて手にしました。 ……ごめんなさい。 やっぱり私、江國香織の文体が苦手です。 もう10年以上前に友達に薦められて読んだ私にとって初の恋愛小説が彼女だったことを思い出しました。 それ以来長いこと、恋愛小説は苦手でした。 主人公の女性が……書きようによってはもっと魅力的なはずなのに、好きになれません。 相手の男性の人となりも、今ひとつ伝わってきません。 ★☆☆☆☆ |
チェルノブイリの少年たち
2005 / 12 / 29 ( Thu )
広瀬隆氏といえば、原発に反対するノンフィクション作家として、『危険な話』が有名ですね。 この『チェルノブイリの少年たち』は、1986年に当時のソビエト連邦で起きた原子力発電所の火災事故をもとに書かれた『ドキュメント・ノベル』となってまして、登場人物たちは著者の想像によるものです。 事故当時私は出版社で働いていまして、とんでもない事故が起きてしまったことは長い間編集部でも話題になっていました。 あれから20年がたち、チェルノブイリの名前を耳にすることはなくなりましたが、あのニュースを聞いた時の恐怖はいまでも私の胸に残り、現場のその後はいつも気になってはいました。そして今更ながら手にしたこの本。 ノンフィクションと思いつつ期待して手にしたものの、新たな情報などは得られずに残念。それと文章力が今ひとつで、満足度は星3つとなりました。 もっと独自の調査やデータが欲しいところ。 ともあれ、この事故を風化させず、教訓として後世に残すには、このようなノベルという読みやすい形のものも必要かも。 ★★★☆☆ |
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