■ 慢性濫読 ■

最近めっきり物忘れがひどいので、簡単な読書メモです。ミステリ多め

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『破獄』吉村 昭  

破獄 (新潮文庫)破獄 (新潮文庫)
(1986/12)
吉村 昭

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内容(「BOOK」データベースより)
昭和11年青森刑務所脱獄。昭和17年秋田刑務所脱獄。昭和19年網走刑務所脱獄。昭和23年札幌刑務所脱獄。犯罪史上未曽有の4度の脱獄を実行した無期刑囚佐久間清太郎。その緻密な計画と大胆な行動力、超人的ともいえる手口を、戦中・戦後の混乱した時代背景に重ねて入念に追跡し、獄房で厳重な監視を受ける彼と、彼を閉じこめた男たちの息詰る闘いを描破した力編。読売文学賞受賞作。



著者は前書きで、『矯正行政に長く関わった、とある人物から聞いた話』と断わっているが、“昭和の脱獄王”と呼ばれた元受刑者・白鳥由栄氏の4度の脱獄を、戦中~戦後という国全体が必死に生き延びようとしていた時代を背景に描いた、実話ベースの小説である。
鍵穴のない、ボルト止めの特製手錠さえ外し、脱獄は不可能と言われた網走刑務所の独居房からも、看守の誰一人として傷つけることも、武器などで脅すこともなく逃走した知恵と体力は圧巻。
密室ミステリさながらの脱出法には驚くばかり。

同時進行で描かれる戦中戦後の様子も興味深い。
空襲によって破壊された全国の刑務所の実状や、そこから逃走し、行方不明のままの囚人の数。
また戦後の食糧難では、餓死する一般市民が増える中、定められた一日の食事の分量を看守たちの尽力によって保たれていながらも、炭水化物に極端に偏った栄養摂取のため、次第に飢えた一般市民よりも囚人の方が死亡率が高くなるなど(脚気によるものらしい)、前回読んだ同著者の『漂流』にもあった死因が興味深かった。

前半はやや冗長的。
同じような場面の繰り返しとも思える表現も。
しかし、この作品の見せ場は、なんといっても囚人・佐久間の脱獄の見事さと、看守との交流だろう。
各刑務所ごとに、佐久間と看守の間に理解があったりなかったりで、佐久間の態度(というか、脱獄への情熱)が変わってくる。
そして終盤、札幌刑務所から府中刑務所への移送は、脱走を防ぐため、米軍専用の貨物コンテナに4人の看守とともにまさにカンヅメ状態となって汽車で運ばれる。
この緊迫した長旅と、最後に模範囚として過ごした府中刑務所に落ち着くまでの看守とのやりとりが、この作品のクライマックスではないだろうか。

イソップ寓話の『北風と太陽』を思い出した。





★★★★☆





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category: 吉村 昭

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『漂流』吉村 昭  

漂流 (新潮文庫)漂流 (新潮文庫)
(1980/11)
吉村 昭

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内容(「BOOK」データベースより)
江戸・天明年間、シケに遭って黒潮に乗ってしまった男たちは、不気味な沈黙をたもつ絶海の火山島に漂着した。水も湧かず、生活の手段とてない無人の島で、仲間の男たちは次次と倒れて行ったが、土佐の船乗り長平はただひとり生き残って、12年に及ぶ苦闘の末、ついに生還する。その生存の秘密と、壮絶な生きざまを巨細に描いて圧倒的感動を呼ぶ、長編ドキュメンタリー小説。



12年間も無人島で生き延びて、しかも助かった人が本当にいたなんて! それも日本で!
驚くやらのけぞるやらで、一気読みしてしまいました。
著者の吉村氏は、綿密な取材と調査を元にしたドキュメンタリー小説をたくさん書かれた方ですが、実話ベースに書かれた物語が持つ迫力だけではなく、吉村氏の筆力や表現力によって、文学作品としても惹き付けられる魅力があります。


本作も実際にあった話です。
天明5年(1785年)1月、現在の高知香南市から同県田野市へ米を運ぶ船に乗り込んだ24歳の長平と船長、ほか2人の船乗りは、その帰路で嵐に遭い、舵の利かなくなった半壊の船は黒潮に捉えられ、遥か彼方へと漂流。
その結果、岩ばかりの無人島(伊豆諸島の鳥島)に漂着する。
わずかばかりの草木が生える火山島では、目にする生き物といえば岩礁に貼り付いた貝類のほかは、斜面を覆い尽くすアホウドリばかり。
水もなく、漂流中に火種を失った4人は、雨水で渇きを癒し、人間を見たことがないため逃げることも知らないアホウドリを素手で捕まえては生肉を食い、命をつないだ。
しかし仲間たちは次々と倒れ、2年目には長平一人が生き残る……。
絶望と孤独で自殺も試みた長平が、12年以上をかけて奇跡的に帰還するまでの執念の物語。



吉村氏も冒頭で書いていることですが、漂流モノ(というか、無人島モノ)って、何故か惹かれてやまないのです。
うんと小さい頃に読んだ『十五少年漂流記』は衝撃的で、今でも時々取り出しては読み返すほど(今読むと「ん?」ともなるんだけどw)。
『ロビンソン・クルーソー』も同じく無人島に漂着するお話だけど、こちらはどうも必死さよりも、文明人の妙なプライドみたいなのが見え隠れして、イマイチ好きになれなかった。
『蝿の王』はちょっと別なところに論点があったけど、目が離せなかったし。
最近読んだ桐野夏生『東京島』も、無人島モノと知って衝動買い(こちらも実際にあったアナタハン島事件をモデルにしたフィクション)。
……と、無人島モノはいくつか読んできたんですが、この『漂流』の迫力といったら比べ物にならないほど。
『東京島』や『蝿の王』のような、仲間同士の殺し合いとか、ただでさえ苦境にいるのに(苦境にいるからこそ)、狂気を帯びて人間性を失っていく姿も描かれているだろうと、「やだなー」と思いながら覚悟しつつ読み進めていたんですが……意外や意外、人間、言葉が通じれば、力を合わせて生きていこう!って気持ちになれるみたいですね。
まぁもちろん、文献などで吉村氏が実際にあったことを調べ、そこに少しのフィクションで肉付けされた作品ではあるんですが。


文体は非常に読みやすく、エンタメ小説としても楽しめる内容ながら、ベースは実話だというところが、ほかの無人島モノにはない凄みだと思います。
オススメ!




★★★★★




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