■ 慢性濫読 ■

最近めっきり物忘れがひどいので、簡単な読書メモです。ミステリ多め

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『仮想儀礼』篠田 節子  

仮想儀礼〈上〉仮想儀礼〈上〉
(2008/12)
篠田 節子

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仮想儀礼〈下〉仮想儀礼〈下〉
(2008/12)
篠田 節子

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内容(「BOOK」データベースより)
信者が三十人いれば、食っていける。五百人いれば、ベンツに乗れる―作家になる夢破れ家族と職を失った正彦と、不倫の果てに相手に去られホームレス同然となった矢口は、9・11で、実業の象徴、ワールドトレードセンターが、宗教という虚業によって破壊されるのを目撃する。長引く不況の下で、大人は漠然とした不安と閉塞感に捕らえられ、若者は退屈しきっている。宗教ほど時代のニーズに合った事業はない。古いマンションの一室。借り物の教義と手作りの仏像で教団を立ち上げた二人の前に現れたのは…。二十一世紀の黙示録的長篇サスペンス。



すごい本でした。
900ページに及ぶ緊張の連続もさることながら、日本人の間ではタブー視されがちな宗教の、しかも新興宗教の実態を描いたフィクションは、怖いもの見たさな好奇心をガッツリと掴んでくれました。
だって宗教って、暴力業関係や非合法薬事関係などと同じくらい、我々一般市民にはその正体を見る機会がない“商売”じゃないですか。
(機会があったら逆に怖いかも)


38歳の鈴木は、都庁の総務部の課長。
昇進試験にも合格したばかりで、いわばエリートコースに乗ったところだった。
しかし鈴木は、公務員としておおっぴらにできないことだが、ゴーストライターという副業を持っていた。
そんな文筆業の夢を捨てきれない彼に、「自分の名前でオリジナルのゲームブックを出さないか」と持ちかけてきたのが、フリー編集者の矢口だった。
矢口にもてはやされるまま、取り憑かれたように作品を書き上げ、ゲームライターを本業にする手応えを得た鈴木は都庁を退職する。
しかし、出版の話は立ち消え、残されたのは原稿の束と、職を失った鈴木と矢口の二人だった。
こうして二人が、金儲けのために立ち上げたインチキ新興宗教団体、『聖泉真法会』は、ウェッブサイトで始まった。
そして、ワインの空き瓶に粘土で形成し金の絵の具を塗った本尊の前に、少しずつ信者が集まるようになる。
彼らは“生きづらい”若者や、家庭に居場所を見いだせなくなった主婦や、いくつかの宗教団体を経てたどり着いた人たち。
やがて、運のよさや人脈が功を奏し、予想以上に団体は成長していく。
ところが、そこに政治家や、さらに大きな宗教団体が接触するようになると状況は一変……。


まず、上巻で驚いたのは、信者として集まる人々が抱える問題の深さ。
特に、IT社長に何年間もホテルで飼われた挙げ句に捨てられた女性の歪んだ社会性や倫理観、いじめられている恨みを呪いで返そうと修行をするオカルト少年など、想像したこともなかったけれど、現実にいてもおかしくないな、と思える現代社会のダークな部分を見せられて恐ろしくなった。
で、最初から詐欺という自覚を持って宗教を始めた鈴木と矢口なのだけど、根っからの悪党ではなくて、大金を求めるよりも信者の話を聞いて上げよう、困っている現状から何とか救ってあげようという気持ちが見えるから、このインチキ宗教団体に、それほど嫌悪感もなく読み続けていました。
いや、むしろ、心のどこかで信者たちに共感したり、成功してゆく教団を喜んで見ていたかもしれない。
けれど、マスコミに取り上げられるようになるととたんに危険な団体として扱われてしまう……残酷だけど、現実ではそんなもんだろう。
さらに下巻では、一旦は鈴木と矢口だけの手には負えないほど膨れ上がった教団が、再び二人の手に戻って来たように見えて、今度は信者の上に乗るような形で暴走してゆく恐ろしさ。
この恐ろしさはきっと、世に数ある怪し気な商売の中でも、新興宗教特有のものなんだろうな。


とにかくすごい作品でした。
商売としての新興宗教の仕組みもよくわかったし、新興宗教に溺れる人たちの心理もわかった気がする。



仮想儀礼2あ、余談ですが、装丁LOVEな私には、かなりドキドキな本でした。
まず、学術本やアメリカの教科書や辞典でよく見かける角背。
ハードカバーの小説では、丸みのある背表紙の丸背というのが主流なんですが、ページ数がある上に、この角背のせいで、なんとなく格調高い雰囲気です。
そして目を引いたのが、金色の花布!
シマシマなら見たことがあるけど、金色なんて初めて見ました。
しかも栞紐が、仏教の高僧が着ける袈裟を連想させる、オレンジと紫なんです。
ね、いかにも“インチキ宗教”っぽいですよね(笑)

仮想儀礼1さらに、帯や見返し、扉の文字色も、栞紐に合わせて黄色&薄オレンジ、ピンク&薄紫とこだわった演出。
もちろん表紙の方も、上巻下巻でその内容を連想させる写真です。
タイトルの書体もカッコイイなぁ。





★★★★★




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category: 篠田 節子

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