内容紹介
我が子を校内で亡くした女性教師が、終業式のHRで犯人である少年を指し示す。ひとつの事件をモノローグ形式で「級友」「犯人」「犯人の家族」から、それぞれ語らせ真相に迫る。選考委員全員を唸らせた新人離れした圧倒的な筆力と、伏線が鏤められた緻密な構成力は、デビュー作とは思えぬ完成度である。
中1の終業式の日を最後に辞職する担任教師・森口(専門は化学)が、生徒たちに別れの挨拶をする中で、校内で自分の4歳の娘が事故死したのは、この中の2人による殺人だったと告げるホームルームのシーンで始まります。
淡々と話すこの女性教師は、とても教養があるんだろうけど、教職への情熱は持っていないような冷静さ。
もともとそういう人なのか、子供を殺されたことでそうなってしまったのかはわからないけど、しょっぱなからとにかく「この人、なんか怖いな」と思いながら読み進め、
愛美は事故で死んだのではなく、このクラスの生徒に殺されたからです。
衝撃的なこの告白で、中断できなくなり一気読みでした。
事故死として片付けられてしまった娘の殺人。
たまたまの偶然もあって、自力で犯人を見つけてしまった教師は、しかし未成年への法的裁きが軽いことから告発はせずに、自らの手で復讐することを決め、この終業式の日に秘かに決行しました。
そしてそこから一気に、負の連鎖が始まります。
デビュー作でこれだけの伏線とオチが書けるなんてすごいと思う。
文体も落ち着いているし、森口先生、彼女の元婚約者で愛美の父親である“世直しやんちゃ先生”、森口辞職後の新担任“ウェルチェル先生”、そして犯人である少年AとBのキャラクターの書き分けが与える印象の効果など、細部に渡って「うまいなぁ」と唸ってしまう作品でした。
ただ欲を言うなら、もっとリアリティを持たせるために、薬品や火薬、メカニズム的に正確で緻密な描写もあるとよかったのに、と思いました。
(あー、でも、そういうのって書いたらマズイのかな?)
アマゾンのレビューを読んでいると、ラストは賛否両論だし、全体的に暗すぎるとか救いがないなどネガティブな感想も多いみたいですが、私はむしろ爽快感すら覚えました。
え? 私って歪んでるのかも??
いや、作品の冒頭でも、森口先生の口から語られる一連の少年犯罪(明らかに現実にあった○○事件とか△△事件であることがわかる)で、大人顔負けの残忍な人殺しをやっていながら年齢が満たないという理由で軽い罰しか与えられないことに対して、私も日頃から疑問を感じていました。
だから、日本の法律では復讐しきれない憎しみを、暴力よりも知能を使って自分の手で果たした森口先生に拍手を送りたい気持ちでした(怖い人だけど)。
ラストもね、私の想像をはるかに上回る復讐で、「おー、そこまでやっちゃったか!」って感心しましたもん。
……なんて、こんなことを書くと非難されそうですが。
だって光市の母子殺人事件だって、足立区であった女子高生コンクリート詰め殺人事件だって、神戸市の酒鬼薔薇なんちゃらによる殺人事件だって、かけがえのない家族を奪われたばかりか殺人者は少年法によって守られてるなんて、遺族の悔しさは私が想像できる範囲を超えてると思うの。
その悔しさを、フィクションではあるけど、少しはやり返してくれたような印象でした。
ちなみに、私がアメリカに引っ越してきたばかりの頃に思ったのは、「ここで一番怖いのは拳銃でもドラックでもなく、ティーンエイジャーかもしれない」ってことです。
★★★★☆
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