■ 慢性濫読 ■

最近めっきり物忘れがひどいので、簡単な読書メモです。ミステリ多め

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『オリンピックの身代金』奥田 英朗  

オリンピックの身代金オリンピックの身代金
(2008/11/28)
奥田 英朗

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内容(「BOOK」データベースより)
昭和39年夏。10月に開催されるオリンピックに向け、世界に冠たる大都市に変貌を遂げつつある首都・東京。この戦後最大のイベントの成功を望まない国民は誰一人としていない。そんな気運が高まるなか、警察を狙った爆破事件が発生。同時に「東京オリンピックを妨害する」という脅迫状が当局に届けられた!しかし、この事件は国民に知らされることがなかった。警視庁の刑事たちが極秘裏に事件を追うと、一人の東大生の存在が捜査線上に浮かぶ…。「昭和」が最も熱を帯びていた時代を、圧倒的スケールと緻密な描写で描ききる、エンタテインメント巨編。



東京オリンピック爆破を狙うテロリストと警察の数ヵ月間が、2段組み520ページのボリュームに描かれている。
ストーリーの軸になっているのは、テロリストであり東大経済学部院生の島崎、若手刑事の落合、島崎とかつては同級生だった警視庁オリンピック警備本部の幕僚長を父に持つテレビ局勤務2年目の須賀で、日付を前後しながら、この3人の身辺で物語が進行する。

秋田の貧しい農家出身の島崎が、オリンピック会場の工事現場で出稼ぎをしていた長兄の死の連絡を受けるところから始まる。
学生運動も盛んだったこの時代、しかも警察の介入を一切拒んだ治外法権のような東大に学んでいながらもノンポリだった島崎。
兄の死がきっかけで、自分の出自のうしろめたさもあって目を逸らし続けた戦後復興と繁栄の陰にある労働者たちの現実に気づき、プロレタリアートとして浮かれる国家に一撃を喰わそうとする。



……のですけどね、時代や情景や伏線のような人間関係とそこで発生する小さな事件は細かく描かれているわりには、主人公の島崎国男の性格や感情や、特にオリンピック妨害というとんでもないテロリズムを実行するに至る動機が弱い気がするんですよ。
もちろん、落合や須賀と視点が変わるたびにどんどん引き込まれていくんですけど、島崎の動機が、「国に対して怒っているんだろうなぁ、たぶん」といった手応えで、それがちょっと残念でした。
でもそれは、島崎が感情の起伏に乏しい人間に描かれてるせいもあるし、そのせいで彼が犯罪などとは無縁の優男として魅力的に見えるのだけれど。

オリンピック妨害の目的は島崎の私利私欲ではもちろんないのが明らかだし、そんなことをして世直しになるとも本当は思ってないのがわかるし、人柱のような兄の死をそこまで悼んでいるようにも見えないし。
もしかしたら、『国じゅうが熱かったあの時代に、そこだけ冷えきった部分(人)』を作者は表現したかったのかも。

前半は似たようなシーンが多くて長く感じられます(後半はスピードアップ)。
それと、島崎のパッションが今ひとつだったことと、優しくて危険で儚げな私だって惚れちゃうキャラの彼が麻薬中毒になっていく姿が悲しかったので星はひとつ減らしましたが、読み応えのある作品でした。



あと、非常に個人的な感想ですが……やはりこの時代がなつかしい。
いや、私は東京オリンピックの翌年に生まれたので(年齢がバレバレw)、「もはや戦後ではない」と当時の首相に言わしめ、今でも海外では「miracle」と形容される日本の戦後復興と経済成長の熱気までは知りませんが、この作品中に描かれているままの東京の風景を覚えています。
路面電車も母に手を引かれて普通に利用してましたし。
また、この作品を読みながらずっと頭に浮かんでいたのは、自分の両親のこと。
彼らもまた東北の寒村出身で、集団就職の夜汽車に紛れ込むようにして上京し、河に囲まれた下町に根を下ろした人たち。
オリンピックに浮かれる東京も知っているし、力道山の試合は電器屋の店先で見ていたし、子供が生まれたからと、工場の煙突に囲まれたアパートから江戸川近くまで引っ越したのだそうです。
「それはそれは貧乏だったわよ」と母は語るけれど、当時20代半ばだった彼らには、未来というのは今よりも良い生活が必ずあると信じられたんだろうなぁ。
それがちょっとうらやましいなどと、場違いなことを考えておりました。



★★★★☆




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