■ 慢性濫読 ■

最近めっきり物忘れがひどいので、簡単な読書メモです。ミステリ多め

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『テンペスト』池上 永一  

テンペスト  上 若夏の巻テンペスト 上 若夏の巻
(2008/08/28)
池上 永一

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テンペスト 下 花風の巻テンペスト 下 花風の巻
(2008/08/28)
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内容紹介
美と教養と見栄と意地が溢れる珊瑚礁の五百年王国は悩んでいた。少女まづるは憧れの王府を救おうと宦官と偽り行政官になって大活躍。しかし待ち受けていたのは島流しの刑だった――。見せ場満載、桁外れの面白さ!



孫家の嫡子として男であることを望まれながら、女として生まれてしまった真鶴。
女子に学問が許されなかった時代の琉球で性別を偽り、宮中で働くための難関・科試(官吏登用試験)をわずか13歳で突破し、女人禁制の王宮の表舞台・評定所(行政機関)で、宦官の役人・寧温として外交手腕を発揮する。
しかし時は幕末。
勢力を失いつつある清国と、イギリスやアメリカの足音に揺れる薩摩の間にあって、琉球王国の運命は?





男装の麗人が愛国心に燃えて戦う“琉球版ベルバラ”?

琉球が舞台の歴史小説とのことで興味を引かれて読み始めたんですが、上巻の半ば過ぎまでなかなか入り込めずに手こずりました。
史実もふんだんに盛り込まれているであろう壮大なモチーフなのに、文体が軽いというかなんというか、地の文にまでカタカナ語や『○○は△△にメロメロだ』、『~してルンルンだった』などと出てきて戸惑いました。
台詞では、語尾に『~』や『!』は当たり前、『……ですぅ』と来た時には、もう読むのをやめようかと閉じかけましたよ。
入水自殺や流刑などの重要なイベント(?)も、ほんの数ページ、へたすりゃ見開きで解決してるし。

でも上巻も終盤にさしかかった頃になって、「もうこのノリに身を任せて楽しめばいいや!」と開き直ったら、俄然面白くなってきました。
伏線よりも、その時その時の思いつきで書いてるんじゃないの?と疑ってしまう展開も、寧温(真鶴)の性別の秘密をネタに脅されるというパターンの繰り返しも気にしない!
とにかくこの作品は、主人公である寧温(真鶴)よりも、傍役たちが魅力的です。
寧温の同僚である朝薫は同性の寧温への恋心に苦悩し、家出した兄(真鶴が女だったために孫家に迎えられた養子)は宮廷女形ダンサーになっていてどんな時でも妹・真鶴を献身的に守ってくれるし、後宮は日々女の争いが繰り広げられる下剋上の世界だし、味方が敵に、敵が味方にと息つく間もないほどのアップダウン。
2段組みで900ページ近いボリュームを、たっぷり楽しませてくれます。


ただちょっと残念だったのは、肝心の主人公に入れ込めなかったこと(私だけかな??)。
天才的手腕で他国とのトラブルをバッサバッサと解決する美少年・寧温は魅力的なのに、本来の性である女・真鶴として描かれたとたん、なんかこう、2、3歩引いてしまうのです。
冷静で理論的な話し方だった寧温が、真鶴になったとたん知性的じゃない、というか……例えば「……しちゃう」、「……なの」という話し方は似合わなさすぎて。
この作家さんの描く女性キャラたちが、なぜかみんな私の脳内ではアニメ絵で再生されてしまうのですよ。
特に側室の親友・真美那。

それから、薩摩藩から琉球に派遣された日本人外交官(?)・朝倉雅博。
カッコイイし頭もいいし剣も立つのだけど……それだけの理由で寧温(真鶴)ほどの人がどうしてあんなに惚れるのか。
結局寧温(真鶴)の人生は、琉球という国への想いと、朝倉雅博への想いで身も千切られんばかりに揺れていたわけだから、朝倉氏の魅力をもっと書き込んで欲しかったですね。


そういえば、娘・真鶴に男名前である寧温と付け、科試合格にこだわった父には大きな理由と野望があるんです。
それが上巻半ばで明かされた時には、「うおーっ、面白くなりそう!!」とワクワクしたんですけど……結局その後ほとんど触れられず、真鶴の隠された身分を証明する霊力のある勾玉も出番はほとんどありませんでした。
真鶴の恋愛模様の方に重きが傾いたようです。



と、なんだかんだ書きましたけど、江戸が東京になった物語終盤では、すごくすごく寂しくなりました。
嫌なヤツだった聞得大君(真牛)には思いがけなく泣かされるし、真鶴と朝倉の恋の行方が最後まで気になって仕方ないし、歴代首里天加那志(琉球の王)は穏やかな人ばかりだったと聞いて安心したし……いつの間にか私も、物語の世界にどっぷり入り込んでいたようです。
普段は日和見なのに、妹のこととなると逞しい女形の兄・嗣勇と、容姿、頭脳、家柄、性格とどれをとっても文句なしなのに、自分は同性愛者じゃないかと悩んだり嫉妬したりする人間臭い朝薫……この2人が大好きでした。



かつて『日本は単一民族国家だ』などと言った人もいたようですが、それは大間違いですよね。
人種のるつぼと称されるアメリカでマイノリティとして暮らす私としては、琉球もアイヌも日本人として敬意を表し、愛しくて仕方ありません。
そんな気持ちを再認識させてくれたこのエンターテインメント小説に感謝。
沖縄の歴史をもっと知りたくなりました!



………この作品、アニメ化したらすごく面白いんじゃないかな。




同じ本について書かれたお気に入りのブロガーさん♪
天竺堂通信




★★★★☆




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天竺堂通信 | 2009/06/01 12:58

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